期間限定、恋人ごっこ
「――やだ!」
私は、思わず布団を弾き飛ばして、転がるようにベッドから飛び出した。
井口は一瞬びっくりしたように眼を見開いたけど、よろっと私を支えるように腕を伸ばして、でも触れる前に引いた。
「起きてたのか」
「やだ! やだ!!」
大きな右手が私の肩をつかみ、大きな左手は私の頭をなでる。
それに押し出されるように、私の目からは涙がぽろぽろ溢れてこぼれた。
「や、やくそくが、ちがうでしょ! 一週間って言ったじゃない!」
「……」
「うそつき! いぐちのうそつき! そりゃ、いやいやだったかもしれないけど、でも一週間くれたんでしょ!? 私が……」
「上岡」
「私が、どんな思いで一週間って期限を、飲んだか、」
しゃっくりが出そう。
涙で曇って、もう目の前の井口は黒い大きな壁にしか見えない。