。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
美人だった。
胸ほどまである長い髪はさらさらのハチミツ色をしている。
170㎝ほどのすらりと長身に、手足が長い。まるでモデルのように整ったプロポーションだ。
前の俺だったら速攻で、口説きにかかってるタイプだな。
「630円になります♪」
にこにこして女を見ると、女の方が赤い唇にちょっと妖艶な笑みを浮かべて、手を差し伸べてきた。
宙にかざした手は握られていたから、その中に小銭が握られているのだろう。
俺は笑顔だけ浮かべて、その下に手を広げた。
女の手が俺の手のひらに重なり、ゆっくりと開く。
手のひらに小銭の感触。
確認しようと思って手を引っ込めようとすると、女の指が俺の指の間に絡まった。
「ね、番号教えて?」
随分ストレート…って言うか積極的だな。
しつこいようだが、前の俺だったら即OKを出していたに違いない。
だけど…
俺は顔に貼り付けたにこにこ笑顔を崩さずに、
「すみません。そうゆう個人的なことはお客様にお教えしないよう、店長からきつく言われてるんです♪」
とさらりと言った。実を言うとこの手の質問はここで働いてからすでに5回目だ。
他にも彼女居るの?とか、終わったら遊びに行こうなんてよく誘われる。
その度にこの返答で切り抜けてきた。
今は朔羅しか目に入らん。あいつ以外要らないんだ。
悪いな。
「ふぅん」女はちょっと面白くなさそうに目を細めて、そして店の奥に居るオネエ店長の方に視線を送る。
「随分厳しいのね」
「規則ですから」
そう笑顔で言って手を離そうとしたとき、女の手が俺の手を強く握った。