。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
腕を引いて引き寄せられそうになったが、女の力だ。
俺は少し腕に力を入れて、それを阻止した。
「あら。見た目に寄らず意外に力があるのね」
女は嬉しそうに笑う。
何なんだ……この女―――
今までのナンパ女とは明らかに異質だった。
正直言ってナンパ目的で無い気がする。だけど俺に近づいてくる理由が分からない。
こんな美人一度見たら忘れねぇし…兄貴たちの恋人か?
短かい間で色々と考えていると、女がふわりと顔を寄せてきた。
俺の耳元で囁くように、
「あたしの名前―――イチユウって言うの。漢数字の一に、結ぶって書いて一結。イチって呼んで。
虎間 戒くん」
低く囁くような声だった。
ひばりのように軽やかで可愛い声の朔羅とは正反対の―――低く、ちょっと掠れるような―――忘れられなくなりそうな色っぽい声。
彼女の手が離れて、俺の手が力を無くしたように…まるで呪縛から解き放たれたように
コツンとカウンターに落ちた。
何故―――
その名前を―――