。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
俺は目を開いた。
目の前の女は切れ長の瞳の底に妖しく光を湛えると、薄く笑った。
ぞっとするような…妖艶な微笑み。
どこかで見た―――笑顔だった。
だけどどこで見たのか思い出せない。
「お前……」
俺は最早よそ行きのにこにこ笑顔を取り繕う余裕がなかった。
得たいの知れない女を見据えて、
“何もんだ”
そう続けようと思ったけれど、
「戒!」
朔羅の声がして、はっと我に返った。
「彼女?可愛いわね」
女は少しだけ微笑むと、大き目のサングラスを取り出し、流れるような動作で装着した。
「またね、戒くん♪」
それだけ言うと、女はひらひらと手を振って身を翻した。
「すっげぇ美人!誰だよ!?」
朔羅が不安げに俺を見上げてくる。その目はただ単にヤキモチを焼いているだけの視線に見えた。
「さぁ。ただのナンパだと思うけど?」
「ナンパ!?おめぇよくされるの??」
朔羅は急に余裕のないおどおどした顔で、去っていく女と俺とを交互に見ている。
「大丈夫だって。俺にはお前だけだ」
小声で言ってちょっと笑いかけると、それでも不安そうに朔羅はまばたきをしていた。