。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


いや、一応は報告しようと思ったんだ。


て言っても面接に合格したあとだったから事後報告だったけど。


前にも一度バイトしたいって言ってみたら、叔父貴はそれにあんまりいい顔しなかった。


「欲しいものでもあるのか?もしあるのなら俺が買ってやる」


なんて言ってくれたけど、欲しいものとかじゃなく…ちょっと経験してみたかったんだよね。


可愛い制服着て、にこにこ笑顔で接客してみたい。まぁ憧れみてぇなもんだな。


結局そのときはバイトをすることは諦めたわけだけど。


今回は戒と一緒に居たいから、なんてもっと動機が不純だ。


怒られることを覚悟で会社に出向いたけれど、会社の正面玄関で陰険蛇田……もとい鴇田と、


若い女の子…(たぶんキョウスケと同じ歳ぐらい)が言い合っているのを見て、あたしはびっくりし、慌てて身を隠した。


ビルの陰からそっとその様子を窺う。


言い合い―――に見えるけど、一方的に怒ってるのは女の子の方で、蛇田は相変わらずの飄々とした態度で、腕を組んでいた。


女の子は明るい長い髪をゆるやかに巻いていて、スラリと背の高いモデルみたいなスタイルだった。


短いデニムのパンツから伸びた脚がすらりと細くて白くて眩しいぜっ!


なんて思いながら様子を窺っていると、女の子は手振りのジェスチャーを交えて、大声で怒鳴っている。


内容まで聞こえないケド…


ってかすげぇな。あの鴇田相手にあそこまで怒れる女ってのは。


でも只ならぬ雰囲気。


女の子が喚きたてる間、蛇田はうんざりしたように額に手をやっていた。


ど、どうゆう関係??


あいつの女?


痴話喧嘩か?と思ったけれど、どことなくそんな雰囲気でもない。


やがて女の方が何かを喚いて、肩をいからせながら走り去っていった。


出て行こうかと思った瞬間…






< 122 / 592 >

この作品をシェア

pagetop