。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


本部の中は狭い廊下が入り組んでいて、叔父貴が居ないと迷子になりそうだった。


廊下の両端にはたくさんの扉があって、どれもびっちりと閉まっている。


やがて広い部屋に出ると、そこからはただまっすぐに畳の廊下が広がっていた。


しんと静まりかえった細い廊下。


だけど夢で見た平坦な壁はなく、代わりに神社なんかでよく見る御簾(ミス:すだれのこと)がかかった細い柱が何本もある。


赤い房が垂れ下がっていて、どこか神秘的だった。


反対側は柱が所々あるだけで、畳の廊下の横のすのこ縁の先には綺麗な日本庭園が広がっている。


夢で感じた、どんよりと薄暗く冷たい空気は微塵も感じず、庭に植えられた比較的多い木々が真夏の暑さを緩和していていっそ爽やかとも呼べる空気が流れているように思える。


平坦な壁と廊下はどこまでも続いていて、その先は暗がりになっていた。


あたしと叔父貴は並んでその廊下を歩き出す。




ジャラッ……




すぐ近くで何かの音がして、あたしは振り返った。


叔父貴は気付いていない様子で足取りを止めない。


立ち止まって廊下の入り口や御簾の向こう側を眺めているあたしに、叔父貴は怪訝そうに苦笑いをもらした。


「どうした?」


「え…?いや…今、何か音が……」


「音?何にも聞こえなかったが」





気の―――せい………?





あたしは御簾の向こう側を見ようとしたが、目の細かい真竹の合わせ目からその向こう側を覗くことはできなかった。


あたしは入り口から奥に続く、御簾を見つめた。


普通の家では絶対にない光景だったから、それが余計に浮世離れしていて






少し



怖い…………








< 146 / 592 >

この作品をシェア

pagetop