。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


「可哀想にな。よっぽど怖かったんだな。そんなに震えて」


戒が出し抜けにぎゅっとあたしに抱きついてくる。


「ちょっ!何どさくさにまぎれて抱きついてンだよ!!」


恥ずかしさにぎゅぅと押し返すと、


「何だよ。ちょっとでも俺が優しく守ってやろうって思ってンのに」とふんと顔を逸らす。


だけど拗ねたのは一瞬だけで、


「俺が会ったときは割りと普通っぽかったぜ?まぁかなりの美人だったことは確かだけど」


“美人”という言葉に反応してムッと戒を睨むと、戒は慌てて目を逸らした。


「そーなんだよねぇ…あたしもちらっとしか見てなかったけど、お店で見たときは、もっと普通っぽかった。


あの場所が墓に近いからそう見えたのかな?ちょっと神秘的な感じではあるし」


「お前の見間違いじゃねぇのか?」


戒が腕を組んで、あたしを覗き込んでくる。


「あたしの目を疑ってンのかよ!確かにあの女だよ!それに声……」


と言いかけて、あたしははっとなった。


「そうだ…。あの女……前に陰険蛇田と言い争いしてた……」


「鴇田と?」


戒の整った眉がぴくりと反応する。


「その言い争いはどんな感じでした?どこでしてたとか覚えています?」


キョウスケが無表情にあたしを見る。


「場所は…叔父貴の会社の前で、言い争いの程度は…何て言うかかなりのもんだったよ。鴇田は相手にしてなかったみたいだけど」


「なんっでもっと早くそのことを言わねぇんだよ!」


バシッ


戒が拳を畳の上に打ちつけた。


こ、怖ぇえ…






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