。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
こうやって戒が腰を屈めると、あたしとこいつの目線はほぼ一緒になる。
背が高い戒をいつも見上げる格好だったから、何か新鮮かも。
ここは従業員用のロッカールームだ。一応鍵は掛けてあるけど。
今あたしたち以外誰も居ない。
それでも戒は人目を憚るようにキョロキョロ視線を泳がせ、誰も居ないことを確認するとそっとあたしの両手を握ってきた。
ふわりと温かくて、さらりとした戒の手の感触が心地良い。
握った指先から熱が伝わってきて、あたしの心臓はドキドキと音を立てる。
こんな風にふいに触れられるのは……
まだ慣れてなくてやっぱり緊張するけど、だけどそれ以上に嬉しい。
戒の温かい指はあたしの指をそっとなぞりあげ、左手薬指にはめられているリングに触れた。
「俺のあげた指輪…つけてくれてるんだな」
「当たり前だよ。バイトのときはさすがに外してるけど、ほとんどいつもつけてる」
戒から貰った桜の花びらが入ったリング…
「すっげぇ嬉しい」
戒ははにかみながらちょっと笑った。
仔犬のような愛嬌のある笑顔に、あたしの心臓がキュ~ンと縮む。
何だか無性に触れたくて、あたしはちょっと戒の首の後ろに触れた。
手の先と同じぐらい熱を持っている。
戒の体温はいつもあたしより温度が高くて、最初あたしは熱があるのかなと思ってたけど違うみたい。
戒はあたしの空いたほうの手を両手でそっと握って、
「ホントはあいつんところに行かせたくない」
と、ぽつりと漏らした。