。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
「こんなところで何をやってる。昼寝でもしてたか?」
俺の問いにイチはふふっと小さく笑って、「死体ごっこ」と言い放った。
「死体ごっこ?」
「そ。もうそろそろあんたが来る頃だろうと思って。びっくりした?」
正直一瞬驚いたが、俺はそれに何も返さなかった。
イチはつまらなさそうに吐息を吐いて、それでも御簾の下から指の先をちょっとだけ覗かせる。
「こうやってさ…」
白い手の甲が出てきて、やがてにゅっと腕までも露になるとイチは手を床に這わせた。
俺の足元までその手を這わせると、予告もなしに俺の足首を掴む。
少しだけ驚いて思わず背を反らす。
「ね?びっくりしたでしょ?って言うかちょっとホラーじゃない?」
イチは何が可笑しいのかクスクス笑っている。
「まぁ確かにな」
俺は曖昧に返して、腰を屈めるとイチの手が引っ込む前にその手首を掴んだ。
「何するのよ」
イチの不機嫌そうな声が返ってきても、俺はその力を緩めなかった。
「お嬢に……朔羅さんに会ったそうだな」
低く問いかけると、イチは黙り込んだ。
御簾がかかっていて顔が見えないから表情まで読めない。
だけど少しばかり動揺してはいるようだ。
「琢磨サンがあんたに言ったの?相変わらずのフットワークね」
あーあ、ヤんなっちゃう。
イチは全然反省してないように、吐息をついた。
今、下手にイチがお嬢に接触する事態を避けたかっただけに―――俺は苛々と怒りを募らせた。
少しばかり乱暴にイチの手を引っ張ると、
「何故お嬢の前に姿を現した!」と声を荒げた。