。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


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イチ……厄介なことをしてくれたな。


お嬢が白虎のガキどもに相談するに決まっている。そうなると、あいつらはどう出るか……


幸いにもまだ白虎にはイチの存在を知られていない。もちろん青龍会でも俺と会長、兄貴しか知らないが…


白虎に変に勘ぐられるのだけはどうしても避けたい―――


運転をしながら、それでもお嬢、虎間 戒、鷹雄 響輔それぞれの顔を消し去ることはできなかった。


特に白虎のガキども二人―――


あいつらは……底知れない何かを隠してる……




鴇田組の事務所兼、龍崎グループの会計事務所は都内にある。


小綺麗なビルの1フロアを貸しきってあって、見た目は普通のオフィスに見える。


最近俺は龍崎会長につききりだったから、自分の事務所があることを忘れていた。(←さらりと忘れるなよ…)


ここで働く組員は青龍会が抱える税理士、会計士で、龍崎組のような見るからに血の気の多い連中はいない。


かく言う俺も会計士の資格を持ち得ている。


しかしやっぱり根はヤクザだ。


「ご苦労様です!オヤジ!!」


俺が事務所に顔を出すと、スーツを着た男たちが緊張した面持ちで顔を上げる。


もちろん俺は彼らの親父じゃない。


ヤクザは擬制の兄弟間で絆を深める。


そこには確かな血の繋がりなんてこれっぽっちもないのに、絆は永遠で、絶対的な主従関係が成り立つ。


俺は彼らのまとめ役で、言わば一家の大黒柱である父親役なのだ。


オヤジ以外にも、「組長」と呼ばれることはあるが、外ではなるべく控えるよう言いつけてある。


事務所はこざっぱりとしていて、いかにもドラマに出てきそうなオフィスの内装だ。


白い壁にコピー機やファックスが設置され、デスクが並び、パソコンや電話機が置いてある。


棚には分厚いファイルがぎっしりと詰まっていて、その奥の小部屋は来客用の応接室になっている。



その応接室の前で人だかりが出来ていた。






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