。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
俺は目の前の飄々とした態度のキョウスケを見据えた。
今更ながら虎間 戒ではなく、こいつが出向いたわけを思い知る。
一寸も狂わない無表情。俺の言葉にもまったく動じた様子がない。
キョウスケはイチが俺の近親者―――だと言った。
妹、姪、―――娘………?
たとえそのDNA鑑定で何が分かっても、動じない。
血の繋がりは俺にとって大して関係のないこと。
俺が恐れるのは、その背景にある事情―――
頭の良いこいつらはイチが何者か判明すると、そのバックにあるものを嗅ぎつけるに決まっている。
それを知られるのは会長に多大な迷惑がかかる。だけど青龍会本部に出向いても、あそこには何もない。
近々イチの身柄も移動させる予定であるし。短い間で俺は様々なことを予想し、組み立てた。
「良かろう。青龍会本部に連れて行ってやる。だがしかし、その数珠と私の毛髪だけはここに置いていってもらうぞ?」
キョウスケは肩を軽く肩をすくめて、ビニール袋を俺の前に差し出した。
毛髪をつまんでいた指の先も、ふっと軽く息を吐くとどこかへ飛んでいった。
「あなたが話が分かる人で良かった」
キョウスケはにっこり笑った。
俺が見る―――初めての笑顔だった。
その笑顔は勝ち誇ったドヤ顔ではなく―――心からの安堵のように思えた。