。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
バタン…と、扉を開ける音がして、二人の男が入ってきた。
「誰も―――居ないようですが?」
ドクターの声が聞こえて、俺はヤツの頭頂部を見た。
「本当だ……でも、確かにパソコンを触った警報が鳴ったんですが…」
警報機か……
きっとキーボードの方に指紋識別のセンサーがついていたのだろう。あんなにあっさり入れたから変だと思ったが…
まさかこっちにあるとはなぁ。
もう一人の男の頭上を見下ろして、俺はこの男に見覚えがないことを知った。
白衣を着ているから医者なのだろうが、どうみても医者には見えないいかつい男だ。
「誤作動じゃないですかね」
ドクターがちょっと呆れたようにため息をついて、もう一人の男も「そんな筈は」と首を捻っていた。
早く…早く行ってくれ。
じゃねぇとこのかっこ、そう何分ももたねぇんだよ!!!
そう―――俺は両手両脚を広げて、天井の梁を衝立に張り付いていた。
おまけにUSBメモリをしまう余裕すらなかったから、口に銜えている状態だ。
変に力を入れてるからか、顎が痛てぇ……
「誰も居なかったと分かったし、帰りましょう」パソコンを覗き込んでいたドクターがそう言って入り口まで歩いていった。
男も大人しくその後に続いて、扉がパタンと閉まった。
ふぅ~
思わず目を閉じる。
間一髪。
ドクターたちが入ってくると同時にデータのコピーが完了したわけだ。
ストッ
俺は床に着地すると、データを今度こそジーンズのポケットに突っ込んだ。