。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
鴇田……やっぱ相変わらずフットワークの軽いヤツだ。
響輔はうまくやっただろうか。
と言うことは龍崎 琢磨のとこにも連絡がいっている可能性がある。
朔羅―――………
そんなことを不安に思いながらもドクターを睨んでいると、こいつは俺の手に衣装の入った紙袋をしっかりと握らせた。
「残念ながら君の欲しがっている情報はここにはない。君たちには実に興味深いものを感じるが、あからさまに協力もできない立場でね」
さも残念そうに言って、ドクターは額に手をやった。
その仕草がどこか大げさで演技くさかったが、こいつはいつもこんな感じだ。今更どうこう突っ込むのもバカらしい。
「まぁ、それは私からのほんの手土産です」
そう言われて俺は手の中に握らされた紙袋を見下ろす。
色とりどりのきれいな布の端がちょっとのぞいていた。
だけどこんなものが何の意味を持つのか。
これ以上このドクターに関わっていると、こっちの情報もこいつに漏らしかねない。
さすがは陰険蛇田の兄貴だぜ。
一癖も二癖もある。………変態だし。
俺は諦めてこいつに背を向けた。
大人しく出て行こうとする背中に向かって―――
「戒くん。これだけは言っておこう。
“事実は小説より奇なり”―――とね」
俺が振り返ると、こいつはいつも見せるあの変な笑顔ではなく、俺が始めて見る
冷たくて余裕のある笑顔を浮かべ、メガネのブリッジを直していた。
やっぱり―――
兄弟だな。弟の笑顔と良く似ている。
だけどそれと同時に、俺は始めてこいつにほんの少しだけ―――得体の知れない恐怖を感じた。
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