。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


叔父貴―――………?


あたしの頬に触れるか、触れないかのところで―――


コンコン…


無遠慮な…だけど、明らかにこちらの様子を窺って慎重な手付きのノック音が聞こえた。


「誰だ?」


「鴇田です。会長、宜しいでしょうか?」


鴇田が来た―――


どうして?今日は事務所に居る筈……


キョウスケ…大丈夫かな……?


一抹の不安を覚えてあたしは意識するのも忘れて胸を押さえた。


「入れ」叔父貴があたしの頬からそっと手を離すと、そっけなく答えた。


ガチャリ


音がして、相変わらず隙のなさそうな足取りで鴇田が入ってくる。


あたしを見ても鴇田は顔色ひとつ変えなかった。


こっちは、何言われるだろうとドキドキして顔も上げられない。


だけど鴇田は、


「廊下の方が騒がしかったのですが、何かあったのですか?」と叔父貴に聞いていた。


「ああ。誰かが洗面所の排水溝に悪戯しやがった」


「ふぅん。悪戯………ねぇ」


含みのある低い声があたしに向けられ、あたしはドキリと固まった。


居心地が悪くて意味もなく視線をきょろきょろさせる。


「お前、今日は休暇じゃなかったのか?」と叔父貴が鴇田に聞いた。


「ええ。そのつもりでしたが、少し野暮用ができたので」


鴇田の視線は依然あたしの方を向いている。鴇田が叔父貴に何か言ったら終わりだ。


ヤバイ!早く逃げなきゃ……





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