。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
大体叔父貴はあたしが居ないとき、部屋では裸族なくせして!
勝負なんてしなくても、充分勝てますよ!!
って、そんなこと考えるあたし……下品??
顔を赤くしたり青くしたりして一人で慌てふためいていると、
「冗談だ。そうだな……敢えてしてほしいことと言ったら……」と言い、ちょっとだけ身を乗り出すとあたしの頭をそっと撫でた。
「その日は俺と一緒に居てくれないか?」
穏やかな微笑みを浮かべて叔父貴は大切な何かを愛しむようにあたしの頭を撫でる。
「特に何をするってわけじゃない。一日中部屋にいてもいいし。レストランで食事でもいい。お前が望むのなら、遊園地にでも連れてっていってやる。
だから俺と一緒に―――」
言葉尻が消えそうにかすんだ。
何かを堪えるように表情を必死に保っているように―――見えた。
あたしは胸の辺りをぎゅっと握って、無理やり笑った。
「そんなんじゃお誕生日の意味ないよぉ」
「それでいいんだ。俺の誕生日だからな」
叔父貴は優しい笑みを浮かべてあたしの頭から手を下ろした。
その大きな掌があたしの頭の線をなぞって、顎の先までゆっくりと降りてきた。
「俺はお前と過ごしたいんだ」
さっきまでの疲れた顔から一転、叔父貴は真剣な目をすると真正面からあたしを見つめてきた。
まるで最後の誕生日かのような物言いに感じて、あたしは急に不安になった。
疲れている横顔。
戒を後継者として話を進めている事実。
あたしに何かを残そうとする言動。
急に昨日歩いたあの蝉時雨が響く歩道を思い出した。