。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


「近々、イチの正体はあいつらにバレるでしょうね」


鴇田が眉間に皺を寄せ、腕を組む。


「それは恐れていない。あいつが現れてからはある程度予想していた。隠し通すことなんて不可能だ」


「色々―――軽率でした。本当に申し訳ございません」


鴇田が眉間に皺を寄せ、珍しく余裕のない表情で深々と頭を下げる。


「気にするな。お前のせいじゃない。だが―――イチのヤツ……何を考えている?」


俺が考え込むように額に手をやると、鴇田は頭を上げ黙り込んだ。


きっとこいつにもあいつの考えていることが分からないのだろう。


「まぁ女心と秋の空は誰にも分からないっていうしな」


ちょっとため息をついて、俺は引き出しを開けた。


あいつ……朔羅は水害騒ぎを起こしているとき、きっとこの中を探った筈だ。


書類の類は多少のずれがあるものの、位置はほとんど変わっていない。


この引き出しの中には、あいつに知られたくないものがある。


だけどあいつは“これ”を見つけることができなかったみたいだ。そのことにほっと安堵する。


俺は一番上の引き出しを開け、その中の書類を取り出した。すぐに浅い底が見えて、端をトンと指で弾くと、フェイク用に作った羽目板がパカっと開いた。


羽目板を外し、その中にある小さなスイッチを押す。


ガコン


鈍い音がして、俺の背後でガタガタ音を立てた。


分厚い壁が上がっていく―――そんな思いを噛み締めながらも完全にその壁が上がっていくのを目と閉じて感じ取った。


鴇田は何も言わずその壁の方を見ているようだ。


ガタン


小さく音がして、俺は目を開いた。







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