。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
隠し壁が開いて、俺は椅子を回転され体をそちらに向けた。
開いた壁の奥にもう一枚壁があり、その壁に日本刀が掛かっている。
「雨龍(ウリュウ)―――…………」
まるで女に話しかけるごとく、優しく俺はその日本刀に呼びかけた。
それは二年前―――実の弟、雪斗を手に掛けた
日本刀だった。
この日本刀がここに隠してあることは俺と鴇田以外知らない。
鴇田は雨龍の元までゆっくりと歩み寄り、両手で雨龍を壁から外した。慎重な手付きで俺の元へ持ってくると、それを俺にそっと手渡した。
まるで産婆が生まれたばかりの赤ん坊を母親に渡すような慎重な……それでいて慈悲深い手付きだ。
鞘に収まった日本刀は、刀身だけでも120cmある大太刀である。
綺麗な反りといい、鈍く光った刃といい最高の出来栄えと言える。
長い間、これは龍崎組が代々所持していた家宝であった。
俺は鞘からそっと刀身を取り出した。
雪斗を貫いて以来、これを使用したことがないが、まったく刃こぼれしていないし、妖しいまで輝く光も以前と変わらない。
刃の側面に自分の顔を映し出す。
輝くばかりに磨きこまれた側面に、罪に汚れた俺の醜い顔が映っていた。