。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


「マサさん。懐中電灯の光りを下から当てないでください。ただでさえ恐ろしい顔が、さらに怖いですよ。ちょっとホラー入ってるし」


冷静なキョウスケの声がして、懐中電灯を取り上げる。


ぅお。キョウスケ、お前何でそんなに冷静なんだよ。しかもあのマサに向かってすっげぇこと言ってるな。


あたしは心臓が止まりそうだってのに。その証拠にまだ


ドキドキ……ドキドキ…


二つの心臓の音が重なり合って、部屋中に響いているように聞こえた。


ん??二つの心臓?


よく見るとあたしと戒はひしっと抱き合って、戒もびっくりしたように目を開いてマサの方を見ていた。


そう言えばさっき叫び声が二つあったような…


その事実が急に現実に戻った気がして、あたしは少しだけ冷静になれた。


「何だよ…戒も結構怖がりじゃん」小声で言うと、戒はあたしからちょっと離れて、


「ふ、不意打ちすぎだろ!ありゃ俺じゃなくてもビビるって」


と、唇を尖らせた。


マサはちょっと戒を睨むと、「メガネっ!お嬢から離れろ!どさくさに紛れて何抱きついてるんだ!」と喚く。


「怖くてつい…響輔さんと間違っちゃいました…」と戒が可愛らしく答えている。


マサはぐっと息を呑んで、


「お嬢も、今日は俺の部屋で寝ましょう」と早口に言って手を差し伸べてくる。


「……え…うん」


雷が鳴るといつもマサの部屋で一緒に寝てるから、今日もそのつもりをしてたけど。





ぐい




暗闇の中で戒の熱くて力強い手があたしの手を引っ張った。



戒―――……?




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