。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
そのまま指をあたしの指の間に滑りこせてきて、複雑に絡める。
懐中電灯の光りが届かない場所で、まるで秘密を共有するように絡めた手に、
あたしはドキリと胸が鳴った。
薄暗い部屋で戒の表情が読めない。
でも―――
手に込められた力が「行くな」と言っている。
「お嬢、どうします?もし良かったらメガネ君と三人で俺の部屋でもいいですけど」とキョウスケも答える。
「このまま暗い廊下を歩くのは危ないですからね」とさりげなく添えて。
戒の指があたしの指をなぞった。
ドキン…ドキン…と心臓が煩い。
「あ、あたし!このままここに居るよ!ごめん、マサ!!わざわざ心配してくれたのに…」
薄暗がりの中でマサが逡巡するように視線をあたしたち三人に向けて、やがて小さく吐息を吐いた。
「ま、キョウスケが居るなら大丈夫か。お嬢を頼むぞ」
そう言い残して、マサはあっさり引き返して行った。
マサが置いていってくれた懐中電灯をテーブルの上に置いているキョウスケを見て、戒が面白くなさそうに呟く。
「お前、マサさんやタクさんにえっらい信用されてるよな」
キョウスケは懐中電灯の光りを調整するように、向きを変えながら、
「タクさんはどうかしらないですけど、マサさんは―――……」
と言いかけ、結局言葉を呑みこんだ。
暗い部屋を懐中電灯の明かりが一直線に光を描いていた。
あたしはその光と同じぐらい、キョウスケの視線がまっすぐにあたしに注がれていることを何となく感じ取った。