。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
あたしも写真を順に見て目を細めると、6枚ある中から2枚を選び、男の前に滑らせた。
その二枚の写真を眺めて、またも男が興味深そうに少しだけ笑った。
「君がこの二人に最初に目を付けるとは思わなかったな。予想外だ」
男は虎間 戒と龍崎 朔羅の写真を取り上げて、白い歯を見せて笑う。
「そうかしら?一番簡単だと思ったのよ」
もう一度写真を覗き込んで、男はテーブルに戻した。
一枚は虎間 戒がカフェでバイトをしているときの姿。決まったウェイターの制服を着こなし、トレーにグラスを乗せて運んでいる最中のもの。
一方の龍崎 朔羅の写真は、どこか大通りの交差点で信号待ちをしているときの姿。
ピンク色のふわふわした小花柄ワンピースが、彼女のふんわりした雰囲気に良く合っている。
二人の写真を撮るのは至極楽だった。あたしの顔を見ているとは言え、変装したらまるきり気付かれなかった。
ま、それだけの自信もあったけどね。
「でも意外に鋭いのはこいつね」
あたしは鷹雄 響輔の写真を指で弾いて、男の前に滑らせた。
「ぼーっとしてるようだけど、隙がない。ま、彼はカフェなんて人の多い場所でバイトしてるわけじゃないし、バイト先の貸金業の行き帰りを狙うしかなかったんだけど、妙に警戒してる」
あたしの言葉に男はうっすらと笑い、写真を弾き返した。
「君が女だからだろう。虎間と龍崎 朔羅の前に姿を現したそうじゃないか。情報が行ってると思ってまず間違いない」
あたしは面白くなさそうに脚と腕を組んだ。
「で、二人をどう料理するんだい?」
男が再び虎間 戒と龍崎 朔羅の写真を眺めて、頬杖を突いた。
「情報に寄ると、二人は付き合っている。それもかなり仲がいいみたいだよ。いわゆるラブラブカップルってやつ?」
男がわざとチャラけて言う。
「そんなの分かってるわ」
あたしが虎間 戒に会いに行ったとき―――彼は頑なにあたしを受け入れようとはしなかった。