。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
今朝家を出る前に洗面所がキョウスケと被った。どうやら向こうはバイトに行く前だったらしく鏡に向かって黒い髪をセットしてた。
「お嬢はお出かけですか?もしかしてデート?」
すでに着替えていたあたしは洗面所で髪を梳かすつもりで足を運んだわけだけど…
そう聞いてきたキョウスケの顔は相変わらずの無表情で、顔の筋肉は少しも動かない。
相変わらず何を考えてるのかさっぱりだ。
だけど少し薄いけど軽薄そうに見えない形のいい唇についつい視線がいってしまって、あたしは慌てて頭を振った。
「え!?あ、うん!!ってデートじゃない!リコと遊ぶ予定!!」
「リコさんと?ブランデー入りのチョコもらってもその場では食わないでくださいね」
キョウスケは意味深にちょっと笑った。
「わ、分かってるよ!」
と言うものの―――去年の今頃、あたしはリコに海外旅行の土産で貰ったブランデー入りのチョコをキョウスケと食べて、酔っ払ってこいつに大迷惑をかけたらしい…
って言うものの、あのとき酔って記憶をなくしたあたしにマサが後日事情を話してくれた。
あたしが何をしでかしたのかは詳しく教えてくれなかったけど、キョウスケはずっと心配してくれてたとか……
でもホントは少しだけ覚えている。
あのとき介抱してくれたキョウスケの手が温かくて、すっごく優しかったことを―――
「キョウスケ…あのさ……夜中…」
「夜中…?」
「あ、あのさっ!雷凄かったよねー!あたし超怖くてさっ」
そうでしたっけ?と返してくれることを期待した。
そしたら何もかも私の幻だった思えるから。
だけどキョウスケはちょっと考えるように顎に手を置いて、
「ええ、結構酷かったですね」とさらりと返してきた。