。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


あまりの驚きにグラスを落としたことも分からなかったように、キモ金髪野郎の手は変な風に宙ぶらりんになっていた。


あたしは慌ててキョウスケを押し戻して、


「こ、これは……」と口の中でくぐもった声をあげた。


言い訳が思いつかない。ってか、言い訳するべき?


「あ、あの…戒の兄貴が遅いから様子見て来いって…。飲み物のおかわりのついでに…」


キモ金髪野郎は気まずそうに声を低めて、まばたきをした。


キョウスケはあたしからようやく腕を離すと、転がったグラスを拾う。


「良かった。割れてないみたい」


平然とした態度にキモ金髪野郎が面食らっていた。


キモ金髪野郎はグラスを受け取ると、慌てて顔を背けて、


「俺!何も見てませんからっ!」と慌てて手を振った。


「別に言いふらしたって構わないよ。そうすることで俺は君を取って食おうってわけじゃないから」


キョウスケが苦笑してジーンズのポケットに手を突っ込んだ。


「いえ、言いふらすなんて…」キモ金髪野郎がしどろもどろ答える。


「ただ……」


キョウスケはちょっとあたしの方を振り向いて、静かに口を開く。


「俺が一方的にやったことだから。お嬢は何もしてないし何も思ってない。そこのとこヨロシク」


そう言ってキョウスケはキモ金髪野郎の肩をぽんぽんと軽く叩いて、


「行きましょう」とあたしを見た。


その言葉の裏に『変なことを吹聴したらぶっ殺す』って言う凄みを滲ませていたのは、気のせいじゃないだろうな…


キモ金髪野郎は顔色を青くして固まっている。


「え…うん」


気まずい思いで俯いていると、キモ金髪野郎も気まずそうにしてちょっと頭を下げ、ドリンクコーナーに走っていった。




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