。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


「すみません。ちょっと着替え中だったもので」


戒がメガネのおっとりした声が聞こえる。


「着替え中って野郎同士だろ?何気にしてンだよ」とタクの不審そうな声も聞こえた。


どうやら襖を開いたようだ。


「おおかたエロビデオでも見てたんじゃねぇのか?」


え、エロビデオ――!!んなわけあるかっ!お前と一緒にすんなっ!


「違いますよぉ。ホントに着替え中だったんです♪見られたら恥ずかしいし…」


戒が口ごもった。


憎らしいほど可愛い声に、あたしの背中にぞぞぞ、と鳥肌が浮き立つ。


さすが二重人格!!


「そ、そうだったな…おめぇはそっちの趣味だったもんな」


とタクも気色悪そうに声を歪めている。


「そうですよ。だから響輔さんは連れ込んでも、朔羅さんはないです」


う゛~ん…いいのか、悪いのか……


そうと分かればタク!おめぇは帰れっ!!襲われっぞ!


ドキドキした面持ちであたしは体を少しだけずらした。


だって押入れ狭いもん。


ずらした手に何かが触れた。


ほんの少しだけ暗闇に慣れてきたあたしの目は、それが戒のバーバリーのトレンチコートであることを知った。





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