。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
―――それから三日後。
午前2時。
前から目を付けていたバイク屋の前で、あたしはフェラーリを止めて車内からじっとそのバイク屋の前を見つめていた。
“彼”が出てくるのに、数分と掛からなかった。
ホンダの黒いシャドウファントム<750>
間違いない。
―――鷹雄 響輔。
街灯の少ない道に鷹雄のバイクのヘッドライトが煌々と輝いている。
鷹雄は大きなバイクにまたがるとエンジンを吹かせて、あたしの前をゆっくりと走り去った。
ヘルメットは着用していない。長袖のシャツの裾が風ではためいていた。
通り過ぎる瞬間、ハンドルに両腕をついてその様子を窺っていたあたしと、風避けのサングラスをかけた鷹雄と一瞬目が合った。
まるであたしを挑発するような淡い笑みを口元に湛えている。
「あたしの存在に気付いてたってわけ?」
ちょっと虚を突かれたように息を呑んだが、すぐにあたしもエンジンを吹かせた。
「いいわ♪おもしろい。あんたの誘いに乗ってやろうじゃない♪」
ハンドルを切ると、あたしは鷹雄のバイクを追いかけた。
鷹雄のバイクは国道をゆるやかに走っている。
バイクのすぐ後ろに車をつけ、あたしはケータイを取り出すと、片手でハンドルを握り片手であの男に電話を掛けた。
相手はあたしを待たすことなくすぐに電話に出た。
「あたしよ。鷹雄 響輔を発見。念のために照合して。黒のシャドウファントム。ナンバーは“練馬 い **** ****”」
『りょ~かい』男はそれだけ答えると電話を切った。
それを見計らったように、前を走る鷹雄のバイクがスピードを突如あげた。