。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
スピードメーターが200kを超えた辺りではさすがにギアを入れかえる手に汗が滲んだ。
クラッチを踏む足も酷使して疲れてきている。足首がつりそうだ。
両手両脚が塞がっている状態は鷹雄も同じなはずなのに、向こうは随分涼しい顔でオービスのない道を避けてすいすいと走っていく。
この街の道路を知り尽くしてるような走りだ。全く迷いがない。
どこまで行くつもりよ…
ハンドルを握りながら、目の前の信号が黄色から赤色に変わった。
鷹雄は―――突っ切るかと思いきや、そのスピードを緩めた。
深夜とは言え、車の通行が皆無とは言えない。信号を交差する道路には青に変わるのを待つ車が数台止まっていた。
あたしはちょっとため息を吐くと、同じようにスピードを緩めた。
信号の前で止まると、彼はあたしを待っていたようにちらりとこちらを見て、またにやりと笑った。
そのぞくりとする笑顔は何を考えてるのか……
鷹雄は突如クラッチを回した。
ブゥン!
派手なエンジン音を鳴らして、僅かに前輪が持ち上がると、鷹雄は急発進した。
嘘!?突っ切るつもり!!
唖然として前方に消え去るその後ろ姿を見送ると、彼は後ろ向きで手を軽く上げた。
交差する信号はすでに青に変わろうとしている。
あたしはぐっと息を飲むと、アクセルを踏み込んだ。