。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
交わる側の道を走っていた車と間一髪のところですり抜けた。
ブーーー!!
派手にクラクションが鳴らされ、「悪いわね」と言ってあたしはクラクションを短く鳴らした。
鷹雄はあたしが追ってきたことにもさほど驚いていない様子で、ちらりとこちらを窺うと再び前を向いた。
逃がさないんだから!そんな執念みたいな思いで、ギアを入れ替えていると、
ウゥ~~!
後方でサイレンの音が聞こえた。
少しスピードを緩めた鷹雄のバイクとあたしのフェラーリが並ぶ。
彼はちょっとあたしの方を見ると、何かを伝えようと顎をしゃくった。
「え?」聞き返すと同時だった。
『そこのフェラーリと大型二輪!止まりなさい!!』
ちょっと振り返ると白バイに乗った警官がメガホンのトランペットスピーカーを通して怒鳴っている。
「ちっ!」舌打ちをして、それでも鷹雄がどうするつもりなのか、あたしは彼を見た。
彼は無言で右手を上げると人差し指でちょっと上を向け、前方を指し示した。そしてその指を左右に振り、最後に手刀を切る。
あたしはちょっと笑顔を浮かべると頷いた。
向こうも笑顔になって、あたしたちはそこから二手に別れた。再びスピードを上げる。
白バイのサイレンが遠ざかっていく。どうやら鷹雄の方を追いかけるようにしたみたいだ。
あの手の合図は……頭上にあがった標識を示していた。
この先は小さいが埠頭になっている。
そこで落ち合おうということだった。
あいつは―――あたしから逃げ切るつもりなんてなさそうだ。
何を考えているのだろう。
そう思いながら、それでもあたしは慎重にハンドルを切った。