。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
黒い髪、黒い長袖のシャツに白いカットソー。下も色の濃いジーンズを履いているから全体的に黒っぽく、闇に溶け込むかのような格好だけど、切れ長の目だけは異様なほど鋭い光を帯びていた。
「カラオケにいたでしょう?その前もちょこちょこ俺の周りをうろついてましたよね。ハイエナみたいに」
は、ハイエナーーー!?
思わずその一言にムカッと来たけれど、冷静さを欠いたら取り引きができなくなる。
それに…
「カラオケにいたこと知ってたの?」
「ええ。気付いてましたよ。お嬢も気付いたみたいだけど、それがあなただとは思ってないはず」
驚いた…あの変装に気付いたなんて。ほんの一瞬しか見られてないと思ったのに。
鷹雄の声は淡々としていて一定のリズムを崩さない。
あたしはこんな風に喋る人間をもう一人―――知っている。
鴇田。そう、こいつ……あの男に似てるんだ。
立場から、喋り方、表情まで。
そう思うと余計に腹が立った。
「なら話は早いわ。あたしが取り引きを持ちかけにきたって分かってるでしょう?」
あたしは持ってきた写真を取り出した。
だけど鷹雄はその写真に見向きもせずに、あたしの車をちらりと見る。
「なるほど、“暴れ馬”か。あなたにぴったりだ」
フェラーリはイタリア語で“暴れ馬”。
その名のごとく、この車を乗りこなすにはかなりのテクがいるし、難しい。
ってそんなことどーでもいいっつの!
何なのこの男。リズム狂わされっぱなし!!