。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
「なん…ですって…」あたしは悔しさに唇を噛んだ。
「じゃぁこの写真を虎間 戒に見せてもいいって言うの!?」
悔し紛れに写真を掲げると、鷹雄はふっと冷笑を浮かべた。
「別にええよ、それぐらい」
まさか相手がこう出てくるとは思わなかった。
この写真は鷹雄にとって都合が悪い事実が映っているはずなのに。
でも鷹雄の飄々とした態度を見ていると、それがはったりや強がりでないことが分かった。
こいつにとって本当にそうなってもいいのだろう。
急にこの写真が意味のないものに思えてきた。
苦労して撮ったのに。全てが水の泡ってわけか……
気がつくとぽつりぽつりと雨の粒が落ちてきた。灰色のアスファルトに黒い染みを作っている。
とうとう降って来たか。
予想していたことなのに、予定していたより少し早い。
天候まであたしを裏切ったように思えて気落ちしていると、鷹雄がポンとあたしの肩を叩いた。
「まぁそう気落ちせんと」
あたしは冗談抜きでその少しも崩れない横っ面を張り倒したくなった。
「あ、あんただけには言われたくないわーーー!」
冗談じゃない!あたしパトカーに追い回されてまでこいつをつけてきたんだろう。
こんな変な男だって知ってればもっと出方を考えたのに。
とは言ってもここで何か考えても仕方ない。
あたしは諦めて車に乗り込んだ。
鷹雄がその様子をちょっと離れたところで見ていた。
彼の視線は車の後方に向けられていて―――ここになってようやく彼が何故自分をここに呼び寄せたのか分かった。