。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


「まぁ、はっきりそう言うてくれて良かった思うてます」


キョウスケはちょっと残念そうに笑うと、あたしの頭を軽く撫で上げた。


「俺、やっぱりお嬢が悲しんでる姿見るのはいやや。だから俺の言ったこと、したこと全て忘れてください」


「わ、忘れれるわけない!それに忘れちゃったらキョウスケの想いはどうなるの?」


あたしが勢い込むと、キョウスケはちょっと目をまばたいた。


「俺のことはほっといてくれてかめへんです。せやけど、お嬢が辛い言うんなら、俺しばらく龍崎家を出ますさかい」


キョウスケはちょっと笑ってあたしの涙を拭ってくれた。


その指先は思った以上に熱い温度だった。


「バ、バカ言ってるんじゃねえ!辛いのはおめぇの方だろ。あたしの顔見るのがいやだったらあたしが出てくし」


「せやかてどこ行きはるんですか?」


キョウスケの冷静な声は普段通りだった。


「どこ行くって、特には考えてないけど、リコの家とか…」口の中でもごもご答えると、キョウスケは出し抜けに笑った。



「そんなこと考えんでも、ここはお嬢のおうちやないですか」


「お前にとっても家だ」


あたしはまっすぐにキョウスケに返した。


涙で滲んでぼやけてたけど、その顔にちょっとびっくりした表情を浮かべている。


「家族だろ?あたしたち。お前の家はここで、他のどこでもない」


そう答えると、キョウスケはまたも微笑んで、


「そうですね」と短く答えた。


そして何かを考えるようにちょっと俯くと、


「ほんまヤクザの世界は自分でもよう分からんわ」と自嘲じみた笑みを漏らす。


え―――……ヤクザ?いきなり話が飛ぶな…


キョウスケはタバコを灰皿に置いて両手のひらを広げると、


「ヤクザって擬制の親子、兄弟の繋がりでしょ?お嬢も俺も―――そうゆう意味では絆があるのかな。


俺が極道に居る限り―――どこかで繋がっていられる」



確かなものはないのに、絆があるって気がするんです。変ですよね………



キョウスケは寂しそうに笑った。




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