。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
蛇田―――…何でここに?
「弟よ。何故ここに?」ドクターがあたしの代わりに、にこにこ聞く。
「衛。お前が何故ここに居る?」
鴇田は眉間に皺を寄せ、訝しそうにドクターを見下ろした。睨んでいる、と言った方が正しいのか。
あたしはリコを背後に庇うようにして立ち上がると、蛇田を睨みあげた。
「そう敵視しないでください。今日はキョウスケに話があってね」
「悪いけど今日はダメだ。キョウスケは熱を出して寝込んでるからな」
あたしが低く言うと、鴇田は軽く肩をすくめた。
「なるほど。それで衛が居るわけだ。話は5分もあれば充分ですよ。二人きりで話させてくれませんか?」
鴇田が作り物めいた笑顔をあたしに向けて、廊下の方を顎でしゃくる。
「キョウスケに何する気だ?」
「そう警戒しないでください。別に取って食おうって言うわけじゃない」
「だけど!」
「お嬢」
横たわっていたキョウスケがのろりと半身を起き上がらせた。
「俺は大丈夫です。話を聞きますよ」
「でも!」それでも不安だったあたしは心配そうにキョウスケを振り返った。
「まぁまぁお嬢さん。ここは鷹雄くんと弟を二人にしてあげましょう。弟が取って食わないって言ったらそうでしょう。
第一ここは龍崎組だ。彼も下手な真似はできないはず」
ドクターの言っていることはもっともで、確かにこの家は龍崎組だから下手に騒ぎを起こすこともないだろう。
だけど鴇田がキョウスケに一体何の話があるってんだ―――
疑問と不安を抱きつつ、あたしはドクターに促され、しぶしぶリコを連れて部屋を出た。