。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
バンッ!
キョウスケの部屋の襖を乱暴に開けると、あたしは目を開いて止まった。
鴇田はキョウスケの正面から両手でキョウスケの首を締め上げている。
布団の上は乱れていて、点滴のパックは床に転がり、キョウスケと鴇田が争った跡が見られる。
キョウスケは布団の上で半分鴇田に沈められるように体制を崩していたし、一方の鴇田は片膝をついて両手でキョウスケの首を掴んでいた。
「「キョウスケ!!」」あたしと戒の怒鳴り声が重なり、鴇田がゆっくりとこちらを振り返る。
キョウスケは苦しげに表情を歪めて、鴇田の腕を掴んでいた。
キョウスケは高熱がある。普通に動くのだって辛そうで、まともに動けないって言うのに!
「何しやがんだ!キョウスケを離せっ!!」
あたしが鴇田に飛び掛ると同時だった。
鴇田はキョウスケを締め上げていた片方の手を解くと、肘を引いて拳をひいた。
わきを締めたその体勢から、拳を下から突き上げるような動作は一寸の無駄もない。
鴇田のストレートを両腕を交差させて受け止めると、じんっと重さを含んだ痺れが伝わってくる。
こいつ―――…ダテに叔父貴の右腕をやってるわけじゃない。
強い!
こいつの細腕からは想像もできないほどの強烈なパンチだ。
「朔羅!」
戒が怒鳴って、その一瞬鴇田から目を離した。
ほんの一瞬だった。
鴇田の腕が伸びてきて、あたしの首元を掴んだ。
――――!!!
鴇田の細い親指が素早く動いて、頚動脈を圧迫する。
鴇田の腕から逃れようと、こいつの腕を掴んだが鴇田が一層力を込めてあたしの気道が絞められる。
息も出来ずに、あたしは目を開いて天井を凝視した。