。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
鴇田の手から開放されたあたしは、それでもすぐに動くことはできなかった。
咳き込みながら床に手を付き、リコの方を見ると、
「何か良く分かりませんが、小悪魔ちゃん。ごめんね?」
とタイガがリコの背後からリコの首に腕を回した。
「キャァ!」リコの叫び声を聞いて、
「リコ!!」
「川上っ!」
「……リコさん…」
とあたしと戒、キョウスケの声が同時に響き渡った。
タイガはリコを人質にとってリコの首を絞め上げている。
「苦し……」リコが苦しげに表情を歪めて喘いだ。
「てめぇ!川上は関係ねぇだろ!」戒が怒鳴って、もう一度脚を鴇田に向って振り上げたが、
「小悪魔ちゃんがどうなってもいいの?」とタイガの声が聞こえてきて、戒は脚を止めた。
「くそっ!」
鴇田の腕がもう一度、まだ咳き込んでいるあたしを引き寄せ、首に腕を回される。
巻きついた腕で再び頚動脈を圧迫されて、苦しさが再来する。
「朔羅」
戒の表情がさっと変わって、素早く周りを見渡した。まるで獲物を捕らえるような鋭い視線を這わせ…それでもこの状況をうまく打破する術を見つけられなかったようだ。
「大人の言うことは素直に聞くもんだな。さぁイチのピアスを渡してもらおうか」
鴇田の冷静な声が耳元で聞こえてきて、地を這う蛇が頭をもたげように思えた。
その声はぞっとするほど低く、それでいてこんな場面であるのに落ち着いている。
経験年数の違いか、悪状況でも上手く立ち回る術を持ちえている。
鴇田は間違いなく、そう言った面でも喧嘩のプロだ。
「……ピアス…?」
「持ってるだろう?イチのピアスの片方だ」
戒は眉を吊り上げてちょっと考えたのち、やがてキョウスケの方を見た。
「響輔」