。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
鴇田は結局、ドクターの触診で右手の薬指にヒビが入っていることが分かった。
すぐにドクターが病院に連れ帰ると言って、鴇田と…そしてタイガを引き連れていった。
去り際に鴇田はあたしを見て、
「ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」と頭を下げた。
あたしはそれに何も答えられず、すぐ近くに居る叔父貴の顔も見ることができなかった。
「朔羅、大丈夫か?」
ようやく戒が戻ってきて、あたしは思わず戒の元へ走り寄った。
「戒っ!」
何も考えずにぎゅっと戒の腕にしがみつくと、戒はあたしの肩を優しく抱き寄せてくれた。
あったかい戒の手のひらに、今までに無い安心を覚え深いため息が出る。
その手のひらはさっき叔父貴が頬を撫でてくれた温度よりも高く、さっき叔父貴が助けてくれたときよりもずっと安心できた。
何もかも包まれて、守られているという実感があった。
「お嬢……」キョウスケも姿を現した。
こっちは熱のせいか、幾分顔色が悪いし言葉も弱々しい。
「キョウスケ、リコは?」恐る恐る聞くと、
「…一時的にショックを受けて興奮はしてましたが、今は落ち着いています」
その答えを聞いて、あたしは思わず肩の力を抜いた。
「朔羅」
叔父貴にふいに名前を呼ばれてあたしは顔を上げた。
その顔に表情がなく、あたしの心臓がドキリと嫌な音を立てる。
「落し前なんて古いと言ったが、我々の世界ではこれがルール。
今回はお前と川上さんに免じてあいつを許したが、今後俺のやることに口出しはするな。
それから俺は俺の怒りに触れるヤツを、たとえ誰であろうと俺は許しはしん。
お前たちでもな」
叔父貴は黒い瞳の奥底で光る険悪な視線を、戒とキョウスケに向けた。