。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
「戒―――……」
思わずぎゅっと戒の手を握り締めると、戒はあたしの手を握り返してくれた。
だけど叔父貴に向けた視線は叔父貴と同じ険しいもの。
琥珀色の淡い瞳の中に金色の光が一本だけ走っている。
虎の―――目だった。
「それから戒。お前に言っておく。黄龍になるということは極道の頂点に立つと言う意味だ。
生半可な気持ちではなれん。
それがどうゆう意味か―――お前自身良く考えるんだな」
叔父貴は低く言ってキョウスケに視線をやる。
キョウスケは無表情に叔父貴を見返し、黙ったまま口を開くことはなかった。
叔父貴は無言でスーツの上着からさっきのピアスを取り出すとあたしたちの前に掲げ、そのピアスを手に握ると、あたしたちの目の前でぐしゃりと握りつぶす。
ピアスが壊れる小さな音が…それでもやけにはっきり聞こえてきて、それが叔父貴の苛立ちであり、叔父貴の怒りのように聞こえた。
今はまだ眠っている龍―――そいつの中で静かに怒りが育つ音―――
「鴇田が迷惑を掛けた。すまなかったな。あいつが約束した本部行きの件も守らせる。それについては心配するな」
叔父貴は戒とキョウスケをゆっくりと見て、そしてこんなときまで優雅な仕草でゆっくりと腕を組む。
「だけど数珠を餌に鴇田を脅し、あいつの怒りを駆ったお前たちにも非はある。
俺には、はったりは通用せんぞ。今回ばかりは目を瞑るが、今後こんなふざけたことをした場合―――
たとえ盃を交わす大事な相手であろうと、俺は容赦しん。
それを覚えておけ」
それだけ言うと叔父貴はくるりと踵を返して、行ってしまった。