。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
「俺、リコさんの様子を見てきます。ユズさん相手だとまた怖がってるかもしれませんから…」
キョウスケがそう言って立ち去り、抱き合ったままのあたしたちが部屋に残された。
「―――……戒」
戒の胸元に顔を預けていたあたしはそっとこいつの名前を呼んだ。
戒は返事の代わりにあたしの背中をぎゅっと抱きしめる。
そしてあたしの頭のてっぺんに顎を乗せると、
「俺は―――あいつみたいにはなれない。
俺はあいつみたいにキョウスケの骨を折ることなんてできない」
と、搾り出すような声が聞こえてきた。
あたしはぎゅっと戒のシャツを握ると、
「あんな風になることない。お前とキョウスケの立場は―――叔父貴と鴇田のとは違う。
だけどあんたが、そんな風に優しいからあたしは好きになったんだ」
そう呟くと、戒がくすぐったそうにちょっと笑った。
「サンキュ」
乾いた笑い声を漏らして、吐息をつく。
「たとえそれが極道のルールでも、あたしにはそんなルール必要ない。
あんたは―――あんたなりに、新しい極道の世界を
作って。ううん、あんたなら作れるよ」
あたしが顔を上げると、戒がちょっと微笑んだ。
あたしはこの笑顔が好き。
何でも大丈夫な気がして―――安心できるんだ。
「お前と一緒なら、新しい世界を作れるのかもな」
戒の口付けが降りてきて、あたしは目を伏せた。
閉じた目の裏で、イチの鮮やかなまでの白い着物の映像が蘇る。
そしてあの―――かごめの歌も同時に頭を流れた……
戒とキョウスケは東西が手を取り合って、新しい世界を作るって説明してくれたけど、
だけどあの歌は―――
ちょっと怖いんだ。