。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
自嘲じみてふっと笑うと、百合香が悲しそうに眉を寄せて僅かに首を横に振った。
抱えた百合の花束を俺の隣に置くと、俺の前にしゃがみ込む。
「馬鹿げてなんていません。
恋は誰にでもあるもの。誰に恋をしようと、誰も咎められないし、誰も止めることなんてできない」
思いのほか柔らかい声で囁かれ、俺はじっと百合香の顔を凝視した。
百合香が俺の頬にそっと手を伸ばしてきた。
紺色の着物の袖から驚くほど白くてきれいな手が見えて、それが百合の花の花弁の色と良く似ていた。
その腕がまっすぐに俺に伸びてくる。
その行動に、俺は驚き戸惑った。俺は微動だにできずただ、ただ……百合香を見つめ返した。
彼女の黒い瞳は暗く濁っていた。
悲しみなのか、同情なのか――――
でも瞳の中に温かい何かを感じて、俺は百合香を抱きしめた。
びっくりして百合香は身を強張らせたが、それでも抵抗などしてこずにそっと俺の頭を撫でた。
今更何をするつもりもなく、俺は百合香を抱きしめたまま―――彼女の肩先で
そっと涙を流した。
「同情なんかじゃありません。
私は―――
あなたをじっと見つめていた。
翔、あなたが―――好きだから。
私があなたの悲しみを受け止められればいいのに」