。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
月日は流れ、それぞれが各々の道を行き―――
ある者は信念に突き動かされ、ある者はまるで世間から隠れるように身を潜め―――
またある者は―――花びらが舞い落ちるように、儚く散っていった。
時が流れ、俺たちに待っていたのがともに歩く道ではなく、すれ違いの未来だった。
そのことに気付き、受け止めるのには―――あまりにも時間が掛かりすぎていた。
――――
――
長いようで短い夢から目が覚め、ぼんやりとまばたくと見慣れた天井が目についた。
俺の寝室だ。
どうやら―――…いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
……頭が痛い…
久しぶりにたくさん酒を飲んだな…なんて、ぼんやりと考えて、腕に僅かな痺れを感じた。
痛てぇ…
指の先をちょっと動かすと、
「………ん…」とイチのくぐもった声が聞こえた。
イチは―――俺の胸元に潜り込むようにして、俺の体を抱きしめ、それでも心地良さそうに寝息を立てている。
びっくりして目をまばたいて、状況を考えてみる。
いや、考える程でもないな。
ここが幾ら俺の寝室のベッドの上だったとしても、俺もイチもちゃんと服を着ているし、第一間違いなんて万の一つでもありえない。
イチは十朱 さゆりの娘で――――
……俺の―――血を分けた
娘だから。
「―――パパ……」
イチの寝言が聞こえてきて、ぎゅっと俺の体に力が入る。
初めてそう呼ばれたことにくすぐったさを感じたが、
でも妙に―――嬉しい。
十九年間―――俺はイチを裏切ってきた。
イチがやらかしたことは、俺に対する復讐であることが分かりきっている。
イチが俺の前に現れた時点で。
イチは……
俺がさゆりを裏切ったこと、十朱母娘を捨てたことを―――
恨んでいるのだ。