。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
正直、白虎との盃の話が出ている今―――朱雀会に繋がるこいつは邪魔者。
いっそ忌むべき存在―――だと言えよう。
しかしイチは朱雀会の娘ではない。
さゆりは―――敵対する青龍の子供を身ごもったことを朱雀会会長(さゆりの父親)に知れた時点で―――
親子の縁を切られた。俺はさゆりが子供を身篭っていたことすら気付かなかった。
さゆりは―――子供を堕ろす―――という選択もあったが、あいつはそれだけは受け入れなかった。
そのことを知ったのは、彼女がイチを産み落とす直前の夜―――
別れてから最初で最後の―――、電話が掛かってきて、そのときにその事実を知った。
『あなたの子供よ。私にはこの子が居ればいいの。
あなたを愛して私は―――幸せでした。
あなたもどうかお元気で。
さようなら』
それから十九年を経た今では―――あの頃の記憶なんて薄れてきた。
その後百合香と恋に堕ちた俺を、さゆりは蔑むだろうか。それとも恨む?
百合香―――…会長―――
そして朔羅―――…
生まれながら俺は、あの美しい龍たちに囚われ―――永遠に……彼らに仕える。
それが決められた運命であり、俺が選んだ道。
だから決めた。
迷いを捨て、会長に生涯尽くすことを―――
俺は父親失格だな。
「そのためだったら、イチ―――…お前が会長やお嬢を陥れるようなことをするならば
たとえ俺は自分の娘であろうと―――」
最後の言葉は口に出来なかった。
ベッドの上で心地良さそうに眠る少女を眺めて―――俺は小さく吐息をついた。
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