。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


「あれ…川上の父ちゃん?」


川上父娘が消えたのを見計らって、柱の影からのっそりと戒が姿を現した。


「そうだよ。娘たちのことを溺愛してるんだ。ちなみにお姉さんが彼氏居ることも千里がリコのおうちに遊びに行ってることもお父さんには内緒らしい。


ボーイフレンドなんてもってのほか!って怒るんだって」


そのいとしの娘が好きな男はヤクザの跡取りなんて知った日にゃぶっ倒れるかもしれねぇ。


「へぇ…」


戒は何か珍しいものを見るような目つきで改札の方を窺いながら、


「娘を持つ親ってあんなもんなの?お前もそーだった?」


と聞いてくる。


「うちは……はっきり覚えてないや…」


あたしは曖昧に頷いた。正直小さい頃に死んじまった父さんの記憶はあんまりない。


だけど―――あたしには優しかった気はする。


「お前の父ちゃんの話ってあんま聞かないよなぁ。どんな人?」


急に問われて、あたしは「う~ん…」と首を捻った。


「叔父貴やマサから聞いた話に寄ると、組のもんには厳しい人だったって。


喧嘩っぱやくて、口が悪くて……って、考えたらあたしそっくりじゃん!」


あたしは目を丸めて戒を見た。


戒は面白そうに笑った。





「でも情にあつくて、義を重んじる人なんじゃねぇの?



厳しいけど―――それ以上に優しい。



お前の容姿は美人の母ちゃん似かもしんねぇけど、



お前の要素ってさ、きっと父ちゃんから出来てるんだよ」








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