。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
以前、叔父貴と手を繋いで歩いたときのように、蝉時雨の音が聞こえる。
連なる塀から覗いた青々とした木の葉が揺れて、路上に影を落としていた。
あのときは―――隣を歩く叔父貴がどこか遠くへ行っちゃいそうで、怖いのと寂しいのであたしは叔父貴の手を強く握ったっけ。
だけど今は―――あたしの隣に戒が居る。
戒があたしの手をしっかり握っててくれる。
「あれからさ、琢磨さんと話してないの?」
戒の声は不思議だ。
今だって決して大きな声で喋ってるわけじゃないし、口調も淡々としていたのに。
その声は心地よく耳に響く。
「……うん。何か…喋るにも何喋っていいか分かんないし。それにあたしたちはそんなに頻繁に連絡取り合う仲じゃないし?」
わざと大げさに笑って戒を見上げると、
「そっか」
戒は足を止め、穏やかに微笑んで、反対側の手であたしの頭を軽く撫でた。
風で揺らめいた葉っぱが戒の顔に影を落としていて、戒の淡い瞳の中もゆらゆらと揺れている。
戒は中身男らしいのに、見た目美少年で……かっこいいけど、可愛いい一面もあって…
だけど今は―――すごくきれい……
男に“きれい”なんて失礼かな。だけどそう思ったんだ。
「でもあいつ絶対後悔してると思うぜ?お前の前であんな風に怒ったこと」
いつもの調子に戻って、戒が再び歩き出す。
「えー?そうかなぁ。叔父貴が後悔とか似合わねんだけど」
「してるって。お前みたいに―――」
え―――…
今度はあたしが足を止める番だった。