。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
ズサッ!
あたしはそいつの登場に思わず後ずさった。
近づいてきた戒もびっくりして足を止めている。
「大丈夫ですか?」
無表情にそう聞かれて、あたしは蛇田……もとい“鴇田”を凝視した。
な、何故こいつが―――!!?
鴇田は爽やかな淡いグレーのストライプが入った皺加工のシャツに、シルエットがきれいなベージュのクロップドパンツの私服姿。
普段の陰険ダークスーツから一転、爽やかお兄さんスタイルに、唖然。
「何だぁ?紳士気取りか?」
と男の一人が鴇田を睨みあげた。
ぎゃ~!お前、誰に喧嘩売ってンだよ!!
あわあわとなるあたしを横に、
「ガキが。女を前にイキがるのも大概にしろ。絞め殺されてぇのか」
なんてドスを含ませた声は妙に迫力があって、眉間に寄せた皺が一層深まると、肩に手を置かれた男がさっと表情を変えた。
こいつはいつだってそうだ。静かなのに、その声や身に纏うオーラは迫力に満ちていて、恐ろしいまでの気迫がある。
あたしまでビビっちまうほど。
男たちは鴇田の妙な気迫に気おされてか、渋々席を立った。
だけど悔し紛れにあたしをちらりと見ると、
「何だあいつ」
「もしかしてあの子のカレシ?」
なんてとんでもないことを言い出しやがって、
プツン
こらえていた何かがキレた。