。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
予想外のことを言われてあたしの方が面食らった。
きゅっと唇を引き結んで、無言でいると、
「あなたにとって虎間との縁談は、言わば政略結婚だ。
あなたは本当にそれで良かったのですか?決められた道を進むことがあなたにとって本当の幸せなんですか。
虎間に抱く気持ちが、錯覚なんじゃないですか」
鴇田はコーヒーカップをゆっくりと持ち上げて、目だけを上げた。
錯覚………
あたしは膝の上でぎゅっとスカートを握った。
戒を想う気持ち―――それは思い込みと錯覚………
なんかじゃねぇ。
「あたしは戒が何もんでも好きになってただろうし、
自分の気持ちぐらい自分で分かる。
あたしはあいつが好きだし、守りたいと思う。
未来永劫手を取り合って歩みたいと思う男は、戒だ」
あたしはまっすぐに鴇田を見据えて、はっきりとそう返した。
揺ぎ無い強いもの。
それは決して目に見えない、絆。
体に流れる血とか、裏で操られる糸とか―――あたしたちには関係ない。
あるのはお互いを想う強い気持ちだけ。
戒を好きだという気持ちだけ。