。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
―――同感だな。
あたしも夏は嫌いだ。
あの雨音のように耳を支配する蝉の音を聞きながら、
母さんが逝った季節―――
母さんの冷たくなった体は、まるで空蝉を思い出させる。
魂の入っていない―――ぬけがら。
その次の夏、まるで母さんの後を追うように親父が死んだ。
防ぎようのない交通事故だった。
ヤクザ間の抗争とかではなく、まったく無関係な。
――――人間なんてあっけないもんだ。
仲がいい夫婦だった。いつも二人で居て、いっつも笑い合っていた。
互いを想い合って、二人ともあたしを愛してくれていた。
あの世でも二人は手を取り合って笑い合っているのだろうか。
あたしを天国で見守ってくれているのだろうか。
そう言えば―――もうすぐお盆だったな。
――……結局あたしは聞きたかったイチとの関係を鴇田に聞くことができなかった。
聞いたところで、こいつはうまくはぐらかすだろうし、たとえ答えたとしてもその言葉が真実ではない気がしたからだ。
でも、危険を省みず、それも主君である龍崎組で騒ぎを起こすなんて覚悟を持って、うちに乗り込んできたからには―――
こいつには相当切羽詰った事情があったに違いない。