。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


「…………」


キョウスケが無言で顔を上げ、あたしは「ふふん」とちょっと笑った。


フェミニストキョウスケでも、分からないことってあるんだな。


ちょっと勝ち誇ったように笑うと、


「お嬢が…乙女……?」とキョウスケが一言。


………


「んだとこらぁ!乙女に決まってンだろが!!」


あたしがキョウスケの胸ぐらを掴むと、リコが慌てたようにあたしを止めに入った。


「や、やめてよ!喧嘩はっ!」


は!いけねぇ!!リコとキョウスケを引っ付ける作戦が、これじゃ台無し!!


慌ててキョロキョロと屋台の連なりを見ると、“金魚すくい”の、のぼりが視界に飛び込んできた。


「あ!ねぇねぇ金魚すくいやろうよ!祭りっぽいじゃん♪キョウスケ、リコにとってやってよ。


あたしはこれなかった戒へのお土産にするからさ~」


なんて言うと、


「金魚……サカナ…」とキョウスケが目をまばたかせた。


「おぅ!おめぇの好きな魚だ!食うなよ。たくさんとろうぜっ!!」


「食っ!?」


リコが目を剥いていたけど、あたしは強引に二人を引っ張って、金魚すくいの屋台まで歩いていった。


大きな丸いたらいの中で泳ぐ金魚は、どれもきれいな赤色を帯びていた。




ひらひら…




金魚の尾が水の中で優雅に揺れて、あたしはところせましと泳ぐ金魚たちをゆっくりと眺めた。





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