。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
そのときだった。
「てめぇら、派手にやってくれたじゃねぇか。何もんだ?」
背後でドスを効かせたチンピラたちが、いつの間にかこの屋台を囲んでいた。人数にして十人ちょっと。
ちっ!こんなにも仲間がいやがったのか。
いかにも、と言う風情のヤクザたちの登場で、辺りが騒然となる。
悲鳴を上げて、みんなわらわらと逃げていこうとする。
「キョウスケ、リコだけはしっかりと守れよ」
普通だったらこんな野郎ぶちのめす自信はあるけど、何せ場が悪い。
こめかみに嫌な汗が流れて辺りを見渡し、あたしはふと顔を上げた。
逃げ惑う人々…悲鳴と足音が入り混じる騒然とした場で……
覚えのある気配を感じた―――
え―――………
あたしは辺りを素早く見渡した。
人がまとう気配と言うのは僅かな匂いだったり、息遣いだったり。
それぞれ全く異なるものを持っている。
―――その気配は爽やかな香りを纏っていて、とても静かで―――だけど、冷静過ぎるほど冷たい。
殺意こそ感じないが、計り知れない巨大な力。
「………お嬢…」
キョウスケも“そいつ”の気配に気付いたのか、そっとあたしに耳打ちしてきた。
あたしも大きく頷いた。
何であいつが―――……?