。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
「マサ!」
あたしは、筋肉モリモリのふっとい腕を組んで中尾組の連中を睨んでいるマサに飛びついた。
マサが出てくりゃこっちのもんだ。
―――そしてマサの登場で、あの気配がふっと消え失せた。
まるでろうそくのともし火のように。跡形もなく、きれいに。
ここは“青龍”の縄張りだ。“あいつ”も下手に動くより、マサに託した方が安全だと踏んだのだろう。
「お嬢、大丈夫ですか?」
マサはいつもの調子に戻ってあたしの頭を優しく撫でてくれる。
「マサ…って、あの“鬼”のマサ!?」
中尾組の一人が唸り声を上げ、後ずさった。
「“鬼”のって??」
とキョウスケが不思議そうにあたしにそっと耳打ちしてきた。
「ああ、こいつ名字が“鬼頭”っての。通り名みてぇなもんだよ。
でも、本当の言われはキレると手がつけられねぇ、まさに鬼ってとこからだな。
地獄の底まで追い詰めるのは、叔父貴じゃなくマサなんじゃねぇのってぐらい」
「へぇ。マサさんが…」
「普段ピンクのエプロンなんてつけってっけど、あいつ強ぇえよ?」
「想像できないですね。ピンクのエプロンの方が似合ってるじゃないですか」
「どこが!あんなクマみてぇなヤツのピンクのエプロンって逆に怖えぇよ!」
なんてこそこそ話していると、
「痛い目遭いたくなきゃ、とっとと消えうせな。それとも龍崎組とヤりてぇってんなら話は別だがよ」
マサがちらりと後ろを振り返り、龍崎組の組員たちを顎でしゃくると、それぞれがポキポキと腕の関節を鳴らした。
さすがに本家本元、
いつもはバカばっかやってるけど、その力は青龍の中で最強と謳われる。
男たちの巨大な威圧感が地面を通してじわじわと伝わってきた。
その龍崎組相手に喧嘩を売るバカなヤツはいないみたいだ。
中尾組の連中は苦い顔をしながらも退いていった。