。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
浅田組の用意した金魚たちはみんな無事だった。
多少弱ってるものの、時間が経てば回復するとのことだ。
マサたちの登場で、あの恐ろしいまでの気配がきれいに消えていたのも気になる。
あいつ………
あたしは左手でぎゅっと胸の辺りを押さえた。
戒がくれた桜の指輪が関節で軋み、小さな音を立てた。
「あの中尾組って言うのは割りと新参ものです。先代のご時世のとき、ここいらを流れていた地回り(ならずもののこと)が上納金を納めることで、青龍に取り入ったってことです」
マサが浅田組の隣のタコヤキ屋の屋台で出してくれたたこ焼きを口に入れながら、説明をくれた。
「ふぅん。成り上がりの成金ってとこか」
「あいつら青龍組のシマ預かってるからっていい気になってるんすよ。何かとつけて浅田組に因縁つけてくるんすよね」
とテッタ&ユウヤが苦々しそうに吐き捨てた。
「仕方ねぇよ。シマ争いはどこの会でもあること。うちは龍崎会長がしっかりと目ぇ光らせてるから、あんまり大ごとにはならないけどよ。
それでもおめぇらもこんな危ういところで商売してるんじゃねぇ。
サツがなだれ込んで来たら、お前らの問題だけじゃなくなるからな」
「「へ、へい!」」
マサの一括で、浅田組のテッタ&ユウヤが慌ててへこへこと頭を下げた。
「まぁまぁそんなに怒らないでやってくれよ。こいつらはこの祭りの会の用心棒みてぇなもんだし」
と、たこ焼き屋のおっちゃんが、がははと笑う。
元々、この花火大会は企業が出資、地元と協賛して行う祭りだが、執り行うのはほとんどが地元の人間。
小さな商店街がいくつも連なるこの町で、町民が互いを支えあい協力し合いながら、祭りを盛り上げる。
微笑ましい話ではあるが、その分中尾組みてぇな連中に邪魔されちゃたまったもんじゃない。