。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
中尾組は確かにこの辺の土地をシマとして預かっているが、地元じゃそのあくどい商売や、極端に風紀を乱していることから町の人間に不評をかっていた。
たこ焼き屋のおっちゃんも、小さなたこ焼き店を中尾組の連中に酷いつぶされ方をされたと嘆いていた。
しかし相手はヤクザだ。
いくら地元の人間とは言え、そのほとんどがカタギ。
誰も楯突く者がいないのをいいことに、やりたい放題。
地元の人間も堪忍袋がキレる寸前。
「そこであっしらが借り出されたわけっすよ。巡回がてら一儲けしようかなぁって思ったんすけどね」
と二人がちょっと肩をすくめて、舌を出す。
あたしは小さく吐息をついて、金魚すくいの屋台の裏で休んでいるキョウスケとリコの方に歩いていった。
たこ焼き屋のオヤジが焼いてくれた出来立てのたこ焼きをリコに渡すと、リコはちょっとだけ顔をほころばした。
それを見てあたしもほっとした。
リコは、だいぶ免疫(?)がついたのかな。目の前で喧嘩が繰り出されても酷く取り乱したりはしなかったようだ。
それとも守ってくれる男が居るからだろうか―――
あたしはちらりとキョウスケを見た。キョウスケは相変わらず無表情で何を考えてるのかさっぱりだったけど…
極道の男は人情に厚い。
ゆえに女を大切にする生き物だ。
生涯を共にすると誓った女は、何があっても守り抜く。
だからかな……
やっぱさっき感じたあの気配は―――
敵へ向けた殺気とはまた反対に、
あたしを助けようとするあったかいものを感じたんだ。