。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
あたしはもう一度ぐいと涙を拭うと、神社の中を覗くようにして身を乗り出した。
入り口は小ぢんまりとしていて、中央に朱色の鳥居がずらりと並び小路を囲むように、また人を招きいれようとしていうるように立っていて、
赤い入り口が―――…ぽっかりと開いていた。
鳥居の路の所々に石灯篭が置いてあり、オレンジ色のほのかな灯りが灯っている。
その光が鳥居に反射して―――
龍と言うより……この鮮やかなまでの紅い色は……
炎を纏い、美しい羽を羽ばたかせる―――
不死鳥―――……鳳凰のそれを奉ってあるかのように思える。
“朱雀”―――……?
そう言えば、前に一度見た実物の“you”…、もといイチの手に握られていたのも、紅の数珠だった。
何で急に思い出したんだろう。
ごくり、と息を呑んであたしは恐る恐るその神社に一歩足を踏み入れた。
夜も19時だと言うのに、夜だということを感じさせないほどの蝉の声が耳に響く。
どこからか賑やかな祭り囃子の音が遠くで聞こえ振り返ったが、
迫りくる森のような木々に止まった蝉の泣き声が雨のように降り注いで、あたしの鼓膜をあいまいに震わせる。
怖い―――…と言う感覚は殆どなかった。
不思議だな。
あたしはお化けとか、超がつくほど苦手だってのに。
あたしは再び前を向いて意を決すると、紅い鳥居をくぐった。