。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
花火!?
◇ 花火!? ◇
―――ドォン…
雷に似た、花火が打ちあがる音が聞こえてきてあたしは顔を上げた。
乾いた空に花火が打ちあがる音が響いて、空が呼応するかのようにすぐに鮮やかでまばゆい光が空に咲く。
「……わぁ。はじまったよ、叔父貴」
墓場へと続くあの長い回廊の縁側に腰掛けて、団扇で顔を仰ぐ叔父貴の袖をちょっと引っ張ると叔父貴は無言で小さく笑った。
ドォン…
また打ちあがり、風に乗って僅かな火薬の匂いが鼻腔をくすぐった。
きれい……
だけど何か物足りない。
それは隣に戒が居ないからだ。
「……最後の花火をお前と見れて良かった」
叔父貴の声は次々と打ちあがる花火の音にかき消されそうなほど小さいものだったけど、
あたしの耳には、はっきりと届いた。
「……―――え…?最後…」
「…ああ、今年最後って言う意味だ」
叔父貴は僅かに苦笑を漏らして、団扇をあたしに向ける。
また……
また叔父貴はどこかへ行っちゃうような口ぶりで話す……
「暑くないのか?」
「…うん…ううん。叔父貴が仰いでくれるから平気…」
あたしは曖昧に笑うと、叔父貴はちょっと考えるように首を捻り、あたしの肩に腕を回してきた。
そのままあたしを引き寄せるようにして傍に近づくと、あたしの肩越しで団扇を仰いだ。
へ?
何が何だか分からなくてあたしが固まっていると、
「こうやって仰ぐと、お前の香りをいっぱいに感じられる。
チェリーブロッサム。
さくらの香りだ」
そう言って、叔父貴はあたしの肩らへんで団扇を仰いだ。